有価証券の取り扱いについて
有価証券とは、株券、国債、地方債、社債などの証券のことです。法律上は、小切手や切手、収入印紙なども有価証券ですが、会計上の有価証券には含みません。反対に有限会社等の出資の持分は有価証券ではありませんが、税法で有価証券として扱っていることから、実務上は有価証券としています。

そして有価証券には、特有の取扱いを伴う処理が3つあります。
1.
有価証券を保有することによって得られる配当金や利益配分は、所得に該当
     し、受取時に所得税の源泉徴収がされています。

2.配当金そのものも、支払側法人の税引後に利益配分したもので、課税済
    みの配当金を受取側で収益に計上してさらに課税することは、二重課税に
    当り、税法上でその取り扱いを細かく規定しています。


3.有価証券は、償却固定資産と同様、時の経過と共にその価値が変動する
    資産で、売買目的の有価証券は毎期末に評価替えをする必要があります。

 有価証券の分類
有価証券は取得目的から大きく2つに分類され、税法での取り扱に違いがあります。
   1.値上がり益を期待して保有する売買目的とした短期保有株(時価評価)
   2.利息目的て満期まで保有する債権や子会社などの企業支配を目的とする長期保有(取得価格評価)
 有価証券の取得及び売却金額について
有価証券の売買価格は、固定資産と同様に約定金額(=売買単価×株数)だけでなく、売買に伴って支払われた費用も含めて計上します。
   ○、有価証券を取得時の有価証券計上金額=約定金額+取得手数料(消費税込み)
   ○、有価証券を売却時の有価証券売却金額=約定金額+取得手数料(消費税込み)
ただし、売却時は有価証券売却益(又は有価証券売却損)を下記のように計算し、計上します。
     「解説」株式(帳簿価格:57万円)を60万円で売却した。このとき証券会社手数料(10,600円)を差引い
               た額が銀行振込されたみした。
借方 貸方
 預金 589,400 570,000  有価証券
19,400 有価証券売却益
      「解説」株式(帳簿価格:57万円)を55万円で売却した。このとき証券会社手数料(10,600円)を差引い
                た額が銀行振込されたみした。
借方 貸方
 預金 539,400 570,000  有価証券
有価証券売却損 30,600
      ※有価証券売却損が勘定科目に設定されていない場合は、雑損失を使用ください。
      ※売却時の帳簿価格は、平均取得単価(又は異動平均単価)×売却株数 で算出します。
 配当金受取時の所得税源泉徴収について
受取配当金の支払側である法人は、所得税法で株式配当にあたり、支払先が法人、個人を問わず所得税の源泉徴収義務があります。(金融機関が支払う利息と同様) ところが受けてった法人は、その配当金を収益に計上し、決算確定後にも法人税(所得)が課税され、2重課税となっています。受取側から見ると配当受取時に所得税を支払い、さらにその配当に対して決算確定時に法人税(所得税)を支払う2重払いとなります。そこで配当受取時に前払いした所得税の返還を確定申告書で求めることを行います。

所得税率は、上場株式に対して7%、非上場株式に対して20%となっていて、この天引きされた税額は、法人税(所得税)の前払いとみなされ、確定申告時に納付する法人税から差引いて納付します。
そして、株式配当金を受取った時の会計処理には以下のような方法があります。
非上場会社の株式配当金(4万円)が預金通帳に振り込まれた。
「解説」資産(預金と仮払金)が増加し、収益(受取配当金)が増加した。
借方 貸方
 預金 40000 50,000  受取配当金
 仮払金 10,000
所得税を先に仮払したとして仮払処理した。

「解説」所得税を法人税等の先払いとして直接法人税等に計上した。
借方 貸方
 預金 40,000 50,000  受取配当金
 法人税等 10,000

「解説」所得税は、決算仕訳時にまとめて処理することとし、ここでは入金額のみ処理する。
借方 貸方
 預金 40,000 40,000  受取配当金
いずれの方法でもかまいませんが、確定申告書作成時には、別表六(1)等の記載漏れのないよう注意が必要。
 配当金は原則益金負参入
「受取配当金の益金負参入」とは、会計上配当金は収益に計上しますが、税法上は、益金にならないことを意味しています。これは、親会社が子会社を支配する目的で保有している株に対して受取る配当金は、子会社が稼いだ利益から法人税等を差引いた後の利益を受けたものです。この受取った配当にまで親会社側でも課税することは二重課税となり、二重課税されるなら子会社を吸収して、親会社の一部門としたほうが得と言うことになります。

そこで「受取配当金の益金負参入」と言う制度が設けられました。ところが現実には財テクや値上がり益を期待して保有する、売買目的とした短期保有株が一般的で、上記した「益金負参入」という理由付けがたたなくなり、売買目的とした短期保有株については、下記するように一定の割合だけを「益金負参入」とされます。

        益金負参入額 = (受取配当金 − 負債利子) × 50%

企業支配を目的(発行株の25%以上を保有)とする長期保有株については、全額を益金負参入とすることになっています。
       

期末の評価替について
有価証券は、一般の固定資産同様に時間の経過で価値が変化します。この変化した価値を取得価格で評価するのは現実主義に反します。そこで売買目的有価証券においては、時価で評価しなおして有価証券評価損又は有価証券評価益を計上します。(評価替)

現実には有価証券を売却していないのに、収益が計上されるのは不思議だと思われるかもしれませんが、期末決算の貸借対照表に記載されている「有価証券」の金額を現実的なじかに評価替えするために行った処理です。

「解説」売買目的の株式(帳簿価格:52万円)の期末における時価は51万円であった。決算により評価替えを行った。(評価替)
借方 貸方
 有価証券評価損 10,000 10,000  有価証券
有価証券評価損が勘定科目に設定されていない場合は、雑損失を使用ください。

「解説」 また、翌期期首において帳簿価格を取得価格に戻しておくために洗い直しを行います。
借方 貸方
 有価証券 10,000 10,000  有価証券評価益
有価証券評価益が勘定科目に設定されていない場合は、雑収入を使用ください。

以上_